執筆者:山内 恵理子(BANSO-CO ばんそうメイト)
保有資格:公認心理師、臨床心理士
心は、嫌なことを「なかったことにしたい」
嫌なことがあれば嫌な気分になる。
考えてみれば当然のことなのに、私たちの心は、嫌なことを「なかったこと」にするよう働くことがあります。
たとえば…
自分ではどうにもできないような苦しい出来事が起きた
一つ一つは小さく見えても普段から嫌な出来事が続いて起きている
こんな時、私たちの心は苦しい状態に何とか対応しようとして、気持ちを分かち合ったり、対策を考えたりします。
しかし、これとは逆に、「逃げる」「固まる」といった反応が極端に強く出てしまうこともあるのです。そうなると、考えることも感じることも遠ざけてしまいたくなり、実際に遠ざけてしまう人もいらっしゃいます。しかし、これでは「臭い物に蓋(ふた)をする」状態で、実はあなたの心はストレスを受けたままなのです。
誤った感情の切り替え方は不調の原因にも
他方で、
「いつまでも引きずっていても仕方がない」
「気持ちの切り替えが大事」
といったこともよく言われます。
しかし、無理に気持ちを切り替えようとしても、胸の中に引っかかってスッキリしないことは、多くの方たちがすでに経験しているのではないでしょうか。
このような状態が続くと、メンタルヘルス不調を招いたり、不調が長引いてしまうことにも繋がることがあります。
感情の役割を知ろう
感情は、私たちが生きる上での大事なセンサーとして機能します。
たとえば…
「不安・恐怖」=危険を察知し、身を守る行動を促す
「怒り」=自分の大切な価値が傷つけられたことに気づくことにより、過度に自分を責めずに判断できる。
「悲しい・寂しい」=自分にとって大切な関係(人やペット)のことを深く思うことで、人や周囲への優しい気もちが生まれる。
この感情のセンサー機能により、私たちは、周囲の環境の変化に対応したり、人とのコミュニケーションを円滑に進めることができるのです。
そんな大事なセンサーである感情を無視し続けてしまうと、うまく周囲の環境の変化に対応できなかったり、人とのコミュニケーションを円滑に進められない場合があります。自分のメンタルヘルス不調を招いたり、メンタルヘルス不調を長引かせてしまうことにもつながり、とても重大な問題です。
では、感情とどうやって付き合えばいいのでしょうか。
上手な感情との付き合い方をご紹介していきます。
ネガティブな感情と付き合うには
「つらい」「イライラする」「悲しい」「苦しい」「みじめだ」「しんどい」
といったネガティブ感情があなたの中で大半を占めている…
とても大変な状況ですね。
そんな時には、一旦感情から離れて身体の休養やリラックスに目を向けることが役に立ちます。
たとえば…
ゆっくりと呼吸をする
ストレッチをする
目薬を差したり、目を閉じたりしてみる
公園を散歩する
お風呂に長めにつかる
少し身体を休めてみると、身体が楽になった感覚や少しポジティブな感情がよみがえってくるでしょう。
あなたの中に安心できる感覚を取り戻したら、ネガティブな感情や出来事について振り返ってみましょう。信頼できる人にあなたの気持ちを話してみたり、ノートに書き出してみたりするのもよいと思います。つらい気持ちを話し合ったり分かち合ったりすることで、出来事を冷静に整理して捉え直すことができるようになります。次のステップとして、これから何ができるかを考えてトライできれば最高ですね。
順番を整理すると、以下のようになります。
①ネガティブな感情が大半を占めている
↓
②身体を休める
↓
③身体が少し楽になり落ちついたところでネガティブな感情や出来事を振り返る
↓
④今までやれていたことを認めて、さらにできることにトライしてみる
まずは今日の気分チェックから
自分の身体のコンディションを確認するように、自分の今の感情の状態を確認することを習慣づけることもよいでしょう。
私たち臨床心理士・公認心理師は、カウンセリングの中で、以下のような方法で相談者の方と一緒に気持ちの確認をすることがあります。
あなたが答えやすい方法はどれでしょう?
あなたの今日の気分は?
絶好調の時を100%とすると今日は何%くらいですか?
「すごく悪い状態」から、「いまいち」、「ふつう」、「まあまあ」、「すごく良い状態」まで、5段階に分けると今日はどの段階ですか?
今日の気分を色で表すと何色ですか?
最近の中で「よかった」あるいは「しんどかった」と感じることがありましたか?
どんな方法でも良いので、1日のどこかで少し時間を取って、ご自身にたずねてみるのがお勧めです。自分の感情や気分のメンテナンスとして、色々なアプリや記録表を活用するのもよいでしょう。BANSO-COを定期的に利用して、ばんそうメイトと話しながら感情や気分の点検することもお勧めです。一緒に話し合うことで、自分一人では気づかなかったような気づきを得られたり、今までよりも落ち着いて自分自身のことを受け止められたりすることもあります。
いかがでしたか?
感情に目を向けることができたら、次は、感情の望ましい切り替え方や、より良いリフレッシュ方法についても考えてみましょう。こちらは別の記事でご紹介します。
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