執筆者:山内 恵理子(BANSO-CO ばんそうメイト)
保有資格:公認心理師、臨床心理士
感情を出すって悪いこと?
感情は人が生きていく上で重要な役割を担っています。
けれども、感情を表現するのはあまり良くないと捉えられることがあります。
例えば…、
「感情的になってしまった」
「感情的にならずに話してよ」
というようにネガティブに語られることがありますね。
「感情的」という言葉を辞書で調べてみると、
感情に関するさま。
理性を失って感情をむきだしにするさま。 (デジタル大辞泉より)
確かに、2.のように自分のコントロールを失ってしまう状態は避けたいと思うのが自然でしょう。「感情的」の対義語に「理性的」という言葉がありますが、「理性的」である方が、ビジネスシーンでは適しているように言われることもあります。特に、男性は「感情的」な状態をあまり良くないことだと考えがちです。
しかし、感情を出すこと自体は悪いことなのでしょうか?
実は、自分の感情から目を背ければ背けるほど、感情的になるリスクがあるのです。
調子が良い時ほど、感情が動いています
なぜ、感情のコントロールが効かなくなることがあるのでしょうか?
人は調子が良い時ほど、様々な感情が豊かに動いています。
「嬉しい」「誇らしい」「満足する」といったポジティブな感情はもちろんのこと、「寂しい」「悔しい」「疲れた」といったネガティブな感情も同時に動いています。
自分の心に沸き起こるいろいろな感情をそのまま受け止め、表現できるほうが、心理学的には健やかな状態であると考えられています。
ところが、調子が悪い時は、苦しい感情だけに焦点が向いてしまい、その苦しさに押しつぶされそうになってしまいます。
こういった状態を「心理的視野狭窄(きょうさく)」と呼びます。
「心理的視野狭窄」の状態に入り込むと、白か黒かといった極端な思考パターンに陥りやすいので注意が必要です。
自分の感情に気づけば「感情的」にならない
では、「感情的」になってコントロール感覚を失ったり、「心理的視野狭窄」になったりすることを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
そのための最初のステップは、自分の感情に目を向けることです。
自分の感情や思考を健やかに保つために、まず自分の状態に気づくことが重要です。
自分の状態に気づくことができれば、どう対応すれば望ましい状態になれるのか、考えやすいからです。そして、望ましい状態が分かれば、自分の感情を上手にコントロールすることにつながっていきます。
例えば…
自分の状態に気づく(何だか息苦しいな)
自分の感情を認める(さっきからイライラしている)
自分の状態を調整する(ペースを上げすぎたかも。小休憩していつものペースを取り戻そう)
自分でコントロールできている感覚を取り戻すことができる(途中でペースを見直したら、無事に仕事が終わった。上手くいってよかった。)
自分の感情を受け止めてもらう体験も大事
今の自分の感情に気づくことができると、適切な物の見方や行動が、自然に分かってくることがあります。
ただ、ネガティブな感情に目を向けることはエネルギーがいるので、一人ではうまくいかないことがあります。また、かえってネガティブな感情にばかり強く入り込んでしまう危険もあります。このようなリスクを防ぐために、安心して自分のことを話せる場所を確保できることが重要です。
今の自分の感情をそのまま受け止めてくれる人や場所があると、「本当はこんなふうに思っていた」「以前からやりたかったのはこれだった」というように、自分にとって大切な価値を再発見できるかもしれません。
私を含め、BANSO-COでセッションを提供するメンタルヘルスケアの専門家たちは、様々な悩みも感情も一緒に話し合い考えていく場所を作ることを目指しています。
よかったらぜひご利用下さい。
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